猫ノ手舎ラジオ部より、満月の日におおくりする短いラジオ番組。
花巻弁(岩手県花巻市のことば)であそぶ「ラズオボッコ」。
パーソナリティのfuuyanm(ふうやん)が生まれ育った故郷、岩手県の花巻市のことばを使って朗読したりします。
花巻のことばの響きのもつ、なんというかなんともいえないものを味わう番組。

花巻弁ラジオ「ラズオぼっこ」 - fuuyanm
00:0000:00

今日の花巻弁「んだ」

 

 

今日の朗読

 

『注文の多い料理店』序


わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、

きれいにすきとおった風をたべ、

桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。


またわたくしは、はたけや森の中で、

ひどいぼろぼろのきものが、

いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、

かわっているのをたびたび見ました。


わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。


これらのわたくしのおはなしは、

みんな林や野はらや鉄道線路やらで、

虹や月あかりからもらってきたのです。


ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、

ひとりで通りかかったり、

十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、

もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。

 

ほんとうにもう、

どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、

わたくしはそのとおり書いたまでです。

 

ですから、これらのなかには、

あなたのためになるところもあるでしょうし、

ただそれっきりのところもあるでしょうが、

わたくしには、そのみわけがよくつきません。

なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、

そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。


けれども、わたくしは、

これらのちいさなものがたりの幾きれかが、

おしまい、

あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、

どんなにねがうかわかりません。

 


 

大正十二年十二月二十日
 

宮沢賢治